INTRODUCTION学生紹介
STUDENT INTRODUCTION
海洋資源環境学専攻
永島 滉也 NAGASHIMA HIROYA
専攻分野:海洋環境科学
指導教員:荒川 久幸
メンター:吴 連慧、長井 健容
手間をかけず、海洋プラスチックの種類と濃度を定量化。生態系への客観的な評価の実現へ
ラマン分光装置で水の中のマイクロプラスチックをそのまま測定
海洋マイクロプラスチック問題が私の研究テーマで、海の中にはどのような種類のマイクロプラスチックが、どのくらいあるのかを効率的に調べる方法を研究しています。
海洋マイクロプラスチックにはさまざまな問題がありますが、その問題に対して今行われているのが、定量化です。世界中で、どこにどのくらいの海洋マイクロプラスチックがあるのかが測定されています。
いろいろな定量化の方法がありますが、一般的なのが船から引いたネットで回収したプラスチックを、赤外線を使って調べる方法です。しかしネットの目より小さいものは漏れてしまいますし、赤外線は水に吸収されてしまうので、サンプルを乾燥させて粒子を取りだすという処理を加えなくてはならず、手間と時間がかかります。それだけでなく、人の手が加わると粒子が壊れてしまうというリスクもあるため、種類や濃度をきちんと測定できるかというと疑問が残るのです。
そういう背景から、私は新しい定量化の方法を開発することに取り組んでいます。研究は、芝浦工業大学の協力のもと、新しく開発された方法を用いて集めたより小さな粒子を含むサンプルに対し、赤外線でなくレーザーを使用したラマン分光装置を活用しています。ラマン分光装置なら、乾かす処理をせずとも、水の中のサンプルをそのまま計測でき、どのような種類のマイクロプラスチックがあるのかがわかります。
海洋のマイクロプラスチックの量をざっくり調べている研究はありますが、実際の濃度や種類の分布は正確にわかっていません。それらを調べることで、人間も含めた生態系にどのような影響があるか、客観的で正確な評価ができるのではないかと考えています。
前例のない新しい研究、自分の考えや発見が「新しいこと」になる
海洋マイクロプラスチックを測定する一般的な方法はあるものの、統一された標準手順がないため、私は新しい測定方法を開発する研究に取り組んでいます。そのため、先行研究が少なく、自分が考えたことや見つけたことが「新しいこと」になります。そこがやりがいですね。例えば去年、学部の卒業研究として取り組んだ、ラマン分光装置で測定した結果から濃度を推定する方法も新しいことだったと思います。
前例がないのが新しく面白い反面、道筋を自分で考えなくてはいけないのが、大変なところでもあると感じています。どうしていいかわからないときは、指導教授や研究室で同じ研究をされているポスドクの方に相談したり、卓越大学院プログラムのメンターに意見を聞いたりして、助言をいただいています。
実験の必要性とAIへの興味から、卓越大学院プログラムへの参加を決意
ラマン分光装置で測定した結果出てくるスペクトルデータにはたくさんの変数が含まれています。処理するための計算が複雑になり、人間が扱うには大変なデータです。さらに定量化するためには、一点だけでなく連続的にたくさんのデータを取得する必要があります。できるだけ多くのデータを取りたいけれど、変数の多いスペクトルデータなので処理に時間がかかってしまう。処理の効率化と、人間では評価できない部分の評価にはAIが必要だと感じました。私自身、もともとAIに興味があったこともあり、卓越大学院プログラムに参加しました。
卓越大学院プログラムの援助で、海外の学会に参加
卓越大学院プログラムは支援がとても手厚いです。例えば、技術支援をしてくれるメンターをつけてくれますし、経済的な支援もあります。
その中でもとても助かったのが、学会の発表支援です。私は2023年10月にフランスで開催された国際学会に出席したのですが、卓越大学院プログラムの旅費支援がなければ行けませんでした。
修士課程の学生で学会に参加している人はほとんどいなかったので、周りの発表レベルの高さを知り刺激を受けましたし、研究者のコミュニティも体験できました。卓越大学院プログラムのおかげで、これからの研究につながる、とても良い経験をさせてもらいました。
また、卓越大学院プログラムでインターンシップにも参加しています。私は2023年9月から1カ月間、海洋研究開発機構へインターンシップへ行きました。たまたまですが、ハイパースペクトルカメラから得られたスペクトルデータを分類するという、私の研究目標と近い内容であったため、インターンシップの経験が直接自分の研究に生かせています。
学会の旅費支援しかり、インターンシップしかり、卓越大学院プログラムに参加したことで、多方面から研究活動を支えられていると感じています。本当にありがたいです。
マイクロプラスチック問題は今後さらに顕在化していきます。その分野の専門家として、世界で活躍できる研究者になりたいです。