INTRODUCTION学生紹介

STUDENT INTRODUCTION

海洋資源環境学専攻

堀口 祐輔 HORIGUCHI YUSUKE

専攻分野:海洋環境科学

指導教員:呉 海云

メンター:宮本 隆典、塩出 大輔

堀口 祐輔

データ解析やAIを学んだことがないけれど
興味があるという学部生には、強く勧めたい

2024.01.10

魚の生理状態から行動原理を明らかにする

魚に記録装置を付け、血糖値と体の動きを測る研究をしています。
魚はストレスを受けると、血糖値が上がることが知られていますが、私の研究では、血糖値より魚のストレスに対する反応にフォーカスしています。

言葉でコミュニケーションが取れない生き物の状態や気持ちを知りたいというのが子どもの頃からの夢。それを確かめるために、魚についての定量的、根拠のあるデータを集めようと思ったのがきっかけです。外から見ても分からない魚の体内における生理状態のデータから、魚の行動原理を明らかにすることを目的としています。

si_photo_horiguchi02.jpg実験の対象はナイルティラピアという魚。日本では一般的ではありませんが、世界で見るとトップレベルの養殖数の魚です。養殖数が多いことと、とても丈夫なことから、この魚を実験対象に選びました。というのも、血糖値を測る際、魚の体内に針型のセンサーを入れるのですが、手際よくセンサーを留置できなければ、弱い魚はその操作段階で死んでしまうのです。けれどナイルティラピアはとても丈夫。麻酔にかけた状態で数十分放置しても生きています。強い魚なので実験がやりやすいですね。

ストレス要因に関する魚の血糖値の変化は、昔から多くの人が研究してきました。私はさらに魚の体に加速度を測る機械を取り付け、加速度と実験中の映像解析を用い、どのような状態でストレスが溜まるのかを調べています。

魚の位置情報を座標で取得することで、魚の状態を客観的に把握

ストレスを受けると血糖値が上がりますが、それはどのような種類のストレスでも同じです。追いかけまわされても上がるし水質が悪化しても上がる。これまでのセンサーの情報だけでは、なぜ血糖値が上がっているのかがわかりませんでした。そこに加速度の情報が加われば、動き回っているので追いかけまわされているのだろうか、じっとしているから水質が悪くなっているのかもしれないといった推測ができます。

実験している間はつきっきりで魚を見ていますが、魚の動きを客観的に数値で把握するため、実験中の映像を撮影して解析し、個体の位置座標をAIで取得しています。位置座標があれば、魚たちの位置関係も含めて状態の判断材料になるという理由です。

研究の一番の魅力は、魚を泳がせたままデータを取得できるという点です。魚が泳ぐ進路やGPS的な位置情報、水温を測れる機械を海洋生物につけて測るという実験はありますが、生理データを取るには工夫が必要。一筋縄ではいきません。魚を泳がせたまま生理データを取ること自体が面白いですね。

また、これまでは魚を捕まえ麻酔をかけて採血をし、血の中の血糖値を測るのが一般的でした。けれど、それらの行動がすべて魚のストレスになります。泳がせたまま生理データを取るほうが真の値に近い。そこも面白いポイントです。

この研究は、将来的に水産系の養殖場や水族館などの人工的に魚を飼育する必要がある場所で活用できると思います。こうした場所では、死んだり体調不良が出たりしてから「何かまずいことがあった」と改善策を探します。けれど私たちの研究室のセンサーは、付けたまま魚を自由に泳がせることが可能。血糖値が上がれば何らかのストレスを受けている予測ができるので、魚に問題が起こる前に、ストレスの原因を探して対処できます。

卓越大学院プログラムではメンター制度を活用、気軽に相談できる先生がいてありがたい

si_photo_horiguchi03.jpg学部時代からこの研究をし、血糖値と加速度のデータは同時に取得できました。けれど解析方法を知らないと気づいたのがきっかけで、卓越大学院プログラムへの参加を決めました。データの使い方を知るためにも、自分が研究者として今後やっていくためにも、データ解析の技術は必要です。卓越大学院プログラムでは、そのスキルを磨くことを目的に勉強しています。

卓越大学院プログラムでは、勉強と実践を平行しながら学びました。私は機械学習やコンピューターサイエンス、データサイエンスというバックグラウンドがまったくない状態でプログラムに参加しました。そういう場合も、メンター制度といって、自分の分野と近く、さらにAIの技術に関することを相談できる先生を紹介していただけます。私自身この制度はとても活用しており、頻繁に先生に相談しています。メンターとして気軽に相談できる先生がいるのは非常にありがたいこと。データ分析をしたいけれどバックグラウンドがないという人にはとてもいい制度だと思います。

博士課程終了後も研究を続け、生理データ以外の情報の取得まで手を広げたい

このまま今の研究室で博士課程まで進み、その後は研究者としてやっていきたいです。生理的なデータを取ることができるのが一番の魅力に感じて東京海洋大に入学し、この研究室に入りました。これからデータ分析に関する技術を身につけていくので、それを生かし、魚や動物の生理データ以外の情報を取得する方法にも、研究の手を広げていきたいです。