INTRODUCTION学生紹介

STUDENT INTRODUCTION

海洋資源環境学専攻

惟村 晴太郎 KOREMURA SEITARO

専攻分野:海洋環境科学

指導教員:牧田 寛子

メンター:小祝 敬一郎、近藤 秀裕

惟村 晴太郎

研究が趣味、持てる時間のすべてを
研究に費やす毎日が幸せ

2024.01.10

微生物の力で、深海のコンクリートひび割れを修復

私は福井の大学出身で、広く微生物、ウイルスを研究していました。大学院進学を検討していた時期に、ひび割れたコンクリートを微生物の力で修復する「自己治癒コンクリート」を知りました。「その技術を海にも応用できたら、海の利活用方法を展開できる」と、その研究ができる大学院を探し、東京海洋大学院に進学しました。現在は、深海においてコンクリート材料を設置したときに、コンクリート材料に及ぼす生物学的な影響を研究しています。

日本は四方を海に囲まれています。なおかつほとんどが200m以上の深海です。日本はこれから深海をうまく利用する必要があると議論されていて、深海域を利用した人工構造物や海洋インフラの建設が計画されています。そのとき使われる材料は、コストが安く耐久性が高いコンクリートやセメント系の材料です。それらの材料を深海に設置すると、どのような影響が材料におこるのかを、微生物学的な観点から調べています。微生物が耐久性においてプラスの効果を与えることもあれば、逆に劣化させたり破壊したりしてしまうという効果もあるため、両方の観点を評価し、今後材料を改良する上や、深海に建物を立てる上で、どのような材料を使えばいいかを調べています。

卓越大学院プログラムでは、AIの機械学習の技術を応用し、新海域に生息する微生物がコンクリートにどのような影響を与えるのかを予測をする研究をしています。微生物の影響からさらに進み、どうすれば深海に人工構造物を建設できるかにフォーカスした研究です。

新しいことに挑戦したい気持ちを叶えてくれた卓越大学院プログラム

si_photo_koremura02.jpg小さいころから研究者に憧れていて、博士課程まで進みたいという希望がありました。卓越大学院プログラムは博士課程後期までを一貫するプログラムなので、私の希望にぴったり合うと思い、参加を決めました。また、卓越大学院プログラムではAIについて学べますが、私はAIに精通しているわけではありません。新しいことに挑戦したいというチャレンジャー精神を叶えてくれるプログラムでもありました。

プログラムでは、1週間に2~3コマのAIに関する講義と、そのほか私の専門に関する講義を受けています。課題や自主学習を含めると週に10時間くらい、卓越大学院プログラムの勉強をしているでしょうか。AIの勉強は大学院に入ってから。授業ではAIの原理や使い方など、実用的な知識を、自分の手を動かし学ぶことができます。

卓越大学院プログラムのもう一つの魅力は、人との出会い

卓越大学院プログラムに参加することで、自分の知らなかった世界に足を踏み入れました。いろいろな考え方を持った人や、いろいろな夢を持つ人に出会えましたし、同じ分野を志す仲間と会えました。そういった仲間と一緒に頑張っていけるというのはとても価値があります。

講義を担当されるのは、企業の方やAIをフルで活用している方々。質問をしたり、話をしたり、年齢を超えた交流ができるのも魅力です。

来年は企業の研究船に乗船して実際に深海へ!

この研究は、研究室のメンバー3人のチームで行っています。研究をしていて楽しいのが、チームの仲間と専門的な話をするとき。なかなか他ではできない話ですが、同じことを勉強しているからこそ盛り上がれます。また、実験結果を発表する機会をいただけるのもやりがいにつながりますし、学会に出ていろいろな研究者と話すことができるのも喜びです。

深海はアクセスが困難なので自分で実際に行くのは難しい場所ですが、実は深海に行く機会があるんです。深海の研究をしている企業の力を借り、研究船に一緒に乗船させてもらい、3,000メートルの深海やそれより深いところに行きます。今年は2年生の方が航海に行ったので、来年は私の番。今から楽しみです。

夢物語のような研究の実現を目指し、尽力したい

研究や学校の勉強が楽しくて、休日も文献を調査しているので、研究が趣味のようになっています。自分の時間を全て使い、研究のための知識を深めていますが、それができる環境があることが幸せです。

私の研究を実用化し深海に人口構造物を建設するのは、今はまだ夢のような話です。けれどすでに、海中のある微生物がコンクリートにバリアを作り、劣化を防ぐ作用をすることはわかりました。いずれ実用化するとすれば、海底パイプラインを作る際に役立つと思いますし、深海ではなくもう少し浅い場所でなら、洋上風力発電の開発にも関連してきます。

実用化に至るまでは時間がかかると思いますが、少しでも実現に近づけるよう、いろいろな知見を創出して、この学術分野を盛り上げていきたいです。