INTRODUCTION学生紹介

STUDENT INTRODUCTION

海洋資源環境学専攻

五十嵐 新之介 IGARASHI SHINNOSUKE

専攻分野:海洋資源エネルギー学

指導教員:内田 圭一

メンター:吴  連慧、宮本 佳則

五十嵐 新之介

AIを学び、想像できなかった知識が手元で構築できるように。自分の世界が広がった

2024.01.10

海域ごとに特徴がある海洋のマイクロプラスチックを、色から調査

海洋のマイクロプラスチックの色から、流出源の推定や流出量を特定できないかという研究をしています。
研究で結果が開示されたわけではないのですが経験的に、いくつかの海域では「この海域はこの色のマイクロプラスチックが多い」という傾向があるのだそうです。例えば、東京湾は緑色のプラスチックが多い、農業用のビニールハウスが多い地域の沿岸では透明のプラスチックが多いなど、海域ごとに特徴があるのだと聞きました。それを詳細に調べれば、新しい評価方法が見つかるのではないかと思ったのが、研究のきっかけです。

そこで、過去の環境省の沖合漂流データから色の調査をすることにしました。最初は目視で色を分類していたのですが、同じ緑でも濃い緑や薄い緑があります。さらに長時間見ていると、同じ色あいの緑なのに青に分類してしまうことも。分類には定量的な基準が必要だと気づき、画像解析ソフトを使って色を数値化することにしました。ところがデータの量がとても多い。そこから、自動で分類させようと考えて研究を進めた結果、人工知能に結び付きました。

卓越大学院プログラムで学ぶことで、AIの技術を想像し、理解できるように

si_photo_igarashi02.jpg実は、データの分類自体はAIを使わずに実現できました。けれどPython(パイソン)を学び始めたこともあり、卓越大学院プログラムでAIやPythonが学べるのなら参加してみようと応募しました。

卓越大学院プログラムで学んで感じた成長の一つが、AIの技術を想像できるようになったことです。今までディープラーニングや機械学習といっても雲の上の話のようで想像がつきませんでした。けれど卓越大学院プログラムで学ぶうち、理解できるようになりましたし、データサイエンスで統計処理をすることに抵抗がなくなりました。想像できなかった知識が手元で構築できるようになり、自分の中の世界が広がったように思います。

今の研究ではディープラーニングを使わなくても分類できてしまったため、研究に直接AIの知識を使っていませんが、学習できたこと自体がとても有益だと感じています。

卓越大学院プログラムで学んだ知識は、他の部分で活用しています。自分の研究とは別に、海洋のマイクロプラスチックのフェレー系を測りデータにして環境省に提出しているのですが、AIを使ったフェレー径の分類システムを作ってみました。今現在もうまく稼働していますが、もっと使いやすくできないかと考えています。
フェレー径と色相の関係は私の研究にも生かせると思いますので、今後結び付けていく予定です。

卓越大学院プログラムのRA制度が研究のモチベーションに

卓越大学院プログラムにはさまざまなサポート制度がありますが、私が多く利用しているのがRA制度(リサーチアシスタント制度)です。これは、研究を報告することで、研究に費やした時間分の時給がもらえるという制度。上限はありますがAIに関係する内容であれば、普段の研究活動でも給付金がもらえます。給付金自体非常に助かりますし、研究へのモチベーションになりますね。

また、インターンシップで企業と関わることができるのもありがたいです。私は10月から11月にかけて、海洋研究開発機構でプラスチックごみの研究に関する業務に携わりました。プラスチックの海ごみを、ハイパースペクトルカメラを使って自動で分類するシステムの一部を前任者から引き継ぎ、分類部分のシステム構築を担当しました。

このインターンシップでは、研究内容が自分の研究とかなり似通っていたので、とても参考になりました。また、前任者がプロのプラグラマーだったので、非常に洗練されたコードを見ることができたのが大きな収穫。今までインターネットで見ていたコードとは全然違った、見やすく理解しやすいコードでした。自分の研究内容と似通ったものの模範例が見られたのはとても価値があることでしたね。今後も機会があればインターンシップに参加したいです。

将来は海洋ごみの研究者に

現在、海洋に流出したマイクロプラスチックは回収不可能と言われており、一度流出すればほとんどが行方不明です。私の研究が進み、流出したあとのマイクロプラスチックがどうなっているのかが詳細に解明できれば、何かしら回収する手立ての手掛かりになるかもしれません。また、流出源が分かれば、そこで対策すれば流出を止められます。

海が好きで東京海洋大学に入学したので、将来も海洋関係の研究をしたいです。特に、海ごみに関わる何らかの研究をしていきたいです。