INTRODUCTION学生紹介

STUDENT INTRODUCTION

海洋生命資源科学専攻

原田 真知 HARADA MASACHIKA

専攻分野:海洋生物工学

指導教員:小祝敬一郎

メンター:宮本 隆典、矢澤 良輔

原田 真知

クルマエビ養殖の感染症被害を食い止め、
経済的損失を最小限に抑えたい

2024.01.10

クルマエビの感染症を食い止め、経済的損失を押さえたい

鎌倉出身で、海辺で遊ぶことが多かったため海や漁業に興味を持ち、関連することを学びたいと思い東京海洋大に入学しました。学部では生物の感染症の授業が多く、そこで養殖クルマエビが感染症にかかりやすいことを知ったのがきっかけで、クルマエビ類に共通する血球細胞の分類に向けたscRNA-seq解析という研究をしています。

クルマエビは世界中で養殖されており、甲殻類養殖数の過半数はクルマエビです。しかし感染症による被害は甚大で、生産量の40%が被害を受けており、被害額は年間30億ドルにも及ぶと言われています。
この研究を進めることで、感染症の被害を食い止め、経済的な損失を最小限にできればと考えています。

医学の分野で用いられる手法を水産に応用

クルマエビ類の血球細胞は免疫を担うのですが、どのような細胞があるのか不明な点がたくさんあります。そこで遺伝子に着目し、遺伝子工学とデータ解析を掛け合わせ説得力のある分類手法の確立を試みています。

si_photo_harada02.jpg研究で用いているのは、single cell RNA-seqという手法。これは、どのような遺伝子が働いているかという情報をもとに分類していく技術で、細胞の分類のほか、細胞の識別可能な遺伝子の発見や、他の生物との共通点や相違点がわかります。single cell RNA-seqは医学の分野で使われている手法なので、水産ではあまり使われていません。それ自体が面白いですし、この解析からわかることは多いので、どのような情報が得られるのか、どのように研究につなげられるかを考えるのも興味深いです。

この研究結果から、クルマエビ類の免疫の基礎的な知見が得られることを期待しています。

これまでの研究成果として、バナメイエビの血球細胞を分類し、細胞の識別に有効な遺伝子を探索できました。これは、今後細胞の種類と機能を調べていくうえでとても重要な発見です。今後の研究でとても役立つと考えています。

また、他の生物との比較も行っており、3つの主要なクルマエビ類とショウジョウバエを比較しています。その結果、クルマエビ類に関しては似たような細胞を持っているのに対し、ショウジョウバエは違いが大きいことがわかりました。ショウジョウバエとクルマエビの細胞は同列に扱われることが多いので、これも重要な情報です。これらの研究が他の生物にも応用できればと考えています。

研究にAIの必要性を感じて卓越大学院プログラムへ参加

私は生物系の研究室に所属しているので、データ解析を専門的に勉強してきたわけではありません。しかし、これからの時代データ解析はとても重要になってくると言われており、意識的にそういう授業を取るようにはしてきました。

けれど研究をする中で感じたのは、データ解析やAIが必要な反面、今までの勉強では不十分だということ。もっと専門的に学ぶ必要があると感じていました。そんな時、指導教員から卓越大学院プログラムを勧められ、データ解析やAIが学べると聞き参加することにしました。

卓越大学院プログラムは多くの分野の学生が集まっています。また、先生方の専門もさまざま。いろいろな分野の人が集まっているので、知らないことや初めて聞くことが多いです。データ解析がどのように使われているのかを先生方から生の実感としてお聞きでき勉強できるので、とても満足しています。

卓越大学院プログラムの授業は、初めてAIやデータ解析に取り組む人でも分かりやすい内容になっています。メンター制度があり、学生一人に指導教員とは別のデータ解析に詳しい教員がついてくれます。初心者でもとっつきやすいカリキュラムになっていて、基礎的な部分から勉強を進めていく授業のほか、概論系の授業も多く、この分野ではこういう解析が使われているということも学べます。

インターンシップへ参加したことで、研究への意識が変わった

si_photo_harada03.jpg卓越大学院プログラムの特徴の一つが、インターンシップです。私は7月と10月に、株式会社ニッスイと、いであ株式会社にインターンシップに行きました。

ニッスイでは、養殖しているブリの寄生虫を自動で検知できる技術を開発しようというプロジェクトに参加しました。いであは2日間という短期間のインターンシップでしたが、環境DNAといって、水からDNAを調べることで、そのエリアにはどんな生物が生息しているかを調べ、さらにAIを組み合わせてどのようなことができるかを調べるプロジェクトに関わりました。

インターンシップを通し学んだのは、自分からどんどん提案していかなくてはいけないということ。先生から言われることをやるだけでなく、自分で考えて提案することの大切さを知りました。それから、自分自身の研究に対しても意識が変わりました。インターンシップは非常に良い経験だったと実感しています。