INTRODUCTION学生紹介

STUDENT INTRODUCTION

プログラム3年次(博士後期課程応用環境システム学専攻1年)

尾関 友啓 OZEKI TOMOHIRO

専攻分野:海洋利用システム学

指導教員:久保 信明

メンター:藤田 実季子(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

尾関 友啓

社会問題を解決する醍醐味を日々実感、
日本では数少ないGPSの研究で企業と協同

2022.10.12

河川を走る船の位置を正しく求める、GPSの精度を上げる方法を研究

ガラケー(フィーチャーフォン)を使っていたときからGPSで位置を表示できましたが、ガラケーだと実際の位置とは明らかにずれた位置が表示されることがありました。スマートフォンになってからは全く違う位置が表示されることは減っています。この「おかしい位置」が表示される理由が、端末の性能や電波の乱反射です。GPSは電波なので、ビルをはじめとした建築物に電波が乱反射しおかしな信号が入って、自分の位置を間違えてしまうのです。GPSにおける位置ズレを減らすのが私の研究で、主に河川を運行する船のGPSを対象としています。東京の河川は道路と同じような環境で、河川を走る船は歩行者や車と同じ問題を抱えています。河川を走る船がより精度の高いGPSを使うためにはどうすればいいかというのが私のテーマです。

日本でのGPS研究はブルーオーシャン、企業との共同研究の機会が多い

日本ではあまりGPSを研究している人がいません。GPSはもともと軍事技術だったため、日本では軍事技術やそれに関連する研究をする人が少ないという背景があります。卓越大学院プログラムではAIに関連した研究を行いますが、AIも研究する人が多くありません。それなら、日本ではブルーオーシャンのGSPとAIを組み合わせてみよう、一緒に研究すれば面白そうだと考えました。

GPSもAIも研究者が少ないことから、企業と共同研究をする機会を多くいただいています。共同研究をすると、いろいろなところに行ける機会があります。何か問題が起こっている場所があれば、「何がおかしいのか調べよう」と声をかけていただき、問題が起きている場所に行って研究できる。GSPは測量や工事現場のモニタリングでも使うため、建設現場にも行きますし、東京湾や江戸川を走る観光用の船にも乗りました。普通ならなかなか行けない場所に行けるのは、この研究の面白いところです。特に私がいる情報通信工学研究室は企業と関わる機会が多いですね。企業の方々と知り合えると世界が広がります。

GPSを研究する日本人が少ないからこそのうまみがある反面、大変な面もあります。そのひとつが、日本語の文献の少なさです。GPSの論文はアメリカや中国など経済力がある国の研究者が書くことが多いので、それを読まなくてはいけません。日本語の論文と比べると、読むのに時間がかかるという問題があります。

そもそもGSPやAIに強い興味を抱いていたかと言うとそうではなく、GPSを研究することになったのはたまたまです。大学1年生のときに受けていた授業で使っていた教室が今の研究室の隣で、教室を行き来する際、研究室に掲示されていた研究内容をよく見ていました。大学3年生で研究室の配属が決まる前に見学に行ったところ、先生からスカウトしていただいたのがきっかけで今の研究室に配属され、GPSの研究をすることになりました。けれど、そのおかげで企業と共同研究ができ、充実した毎日を過ごせているのですから、ありがたいですね。

卓越大学院プログラムで多くのつながりが生まれ、刺激を受けている

si_photo_ozeki02.jpg卓越大学院プログラムが始まったのは、2020年から。私が大学院に進学したタイミングでした。「ちょうど始まるところだし、1期生になるからやってみよう」と参加しました。

そんなカジュアルな理由から始まった卓越大学院プログラムですが、今は参加したメリットを多く感じています。たとえば、大学の研究室にはコミュニティが狭いという問題があります。博士課程まで研究する人は、どこかでインターンシップをしない限り6年間ずっと同じところにいることになるのです。しかし、卓越大学院プログラムに参加すれば、大学以外にも拠点ができ、大学では知り合えないような方々と出会えます。刺激をもらえますし、自分の中に風を吹き込むことができる。多くの人とつながりを持てるのは非常に大きなメリットです。

日本にGPSの分野がある限り、研究を続けたい

社会テーマがそのまま企業との共同研究テーマになり、それが私の研究になっています。社会が抱えている問題を解決するために動いているので、私の研究はすでに社会実装できていると言えるのではないでしょうか。GPSの研究で博士を取るつもりなので、これからもこの分野で社会貢献していきたいです。国の政策として、日本独自のGPS衛星「みちびき」を2030年まで運用させることが決まっています。2030年まではこの分野はなくならないはず。日本にGPSがある限りは、できるだけ長くGPSの研究を続けていきたいですね。