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海洋AIコンソーシアム設立記念シンポジウムを
開催しました

2021.02.16

 2021年216日に「海洋AIコンソーシアム設立記念シンポジウム」を開催しました。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、オンラインにて実施し、約140名の方々が参加しました。庄司副学長の基調講演で幕を開け、海洋AIコンソーシアム連携機関等の有識者による講演が行われ、最後には「AI・データサイエンスに関する人材育成」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

特設サイトはこちら

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基調講演『海洋産業AIプロフェッショナル育成卓越大学院プログラムが目指す世界』

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東京海洋大学副学長(プログラムコーディネーター) 
庄司るり

本学が実施している海洋産業AIプロフェッショナル育成卓越大学院プログラムの概要、人材育成の方向性について紹介するとともに、これまでの取組について紹介しました。

講演資料

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講演1『海洋掘削における人工知能技術の活用について』

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国立研究開発法人海洋研究開発機構研究プラットフォーム
運用開発部門 技術開発部基盤技術研究開発グループ グループリーダー代理 
井上朝哉

海洋掘削の概要と機械学習を適応する目的をご説明の後、適応例として掘削地層や地層サンプル回収率の予測と異常検知に対する取り組みを紹介しました。

「海洋掘削の分野でもまだまだAI適応が進んでいない部分があります。そこに新たな人材が来ていただいて進めていただきたいと考えており、卓越大学院プログラムに期待しています。」とコメントがありました。

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講演2『スマート水産業の現状と将来』

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国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所 
水産資源研究センター 漁業情報解析部長 
上原伸二

水産業の持続可能性の確立に向けたAIの活用について、その可能性や、実際に取り組む中での課題について講演しました。

「1.漁獲量データ収集の課題」では、全国の漁港から情報を集めること、データがない場合等の、データを統一的に集約することの難しさを紹介しました。

「2.画像解析技術を活用した漁獲物の生物情報」においては、小田原漁港を舞台に画像データを集めるところから深層学習を用い、AIでの魚種判別と体長測定を行うかの実例を説明しました。

講演資料

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講演3『AI技術の最前線-自然言語処理の発展とスケーリング法則-』

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株式会社NTTデータ 技術開発本部
企画部 VISTECH推進室 室長 
樋口晋也

AIの動向として、第3世代AIの画像認識は人間の精度を上回り、言語処理については学習データを大規模化することで自然言語の処理ができるようになってきていることや、特に進化した言語処理では進化のため年々学習するモデルサイズが巨大化し、その性能は、パラメータ数、データセットサイズ、計算機の予算の3変数のべき乗になることを説明しました。このAI巨大化の法則が、画像など自然言語以外でも同様に働くとしたら、新たな革新が期待できると同時に、AIはアルゴリズム開発の世界ではなく予算がいくら確保できるかの世界に代わる可能性もあるとの意見を述べました。また新たなAI開発手法「自己教師あり学習」にも注目しており、これによりAI普及が進むのではとの考えを示しました。

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講演4『Using Big Data in the pursue of a sustainable and safe maritime future』

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Department of Mechanical Engineering,Technical University of Denmark(DTU)
Ulrik Dam Nielsen

DTU Mechanical Engineeringで実施している最新のプロジェクトをご紹介しました。

・複数の観測プラットフォームを用いた海況予測

・燃料効率向上のためのレトロフィットの評価

・さまざまな海運ステークホルダーにとっての運航最適化のメリット

講演資料(日)

講演資料(英)

録画

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パネルディスカッション『AI・データサイエンスに関する人材育成』

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コーディネーター:海洋工学部長 井関俊夫(プログラム責任者)

パネリスト:シンポジウム講演者

各パネリストから各機関における人材育成の重要性、必要性、課題・問題点について紹介

  • NTTデータ樋口様
    2030年に必要な先端IT人材は73万人(およそ全労働人口の1.5%)そのうち約38万人不足と言われている中、AI導入に必要な知識はAIそのものの他に法律、契約、倫理等多岐にわたることから、人材育成は容易ではないでしょう。
    そのほか、AI人材として備える能力として、受け身ではなく、自ら課題を発見して試行錯誤する課題設定力や、デバイス、通信、AI、クラウドを統合してサービスが成立することから他分野との連携スキルも求められると述べました。

  • 国立研究開発法人海洋研究開発機構 井上様
    JAMSTECは豊富なデータを所有するが、現在の研究だけでなくさらなる発展までには保有データを活かしきれていないと感じており、そのキーになるのは人材です。その人材に期待されるものは、AIに関連する多岐にわたる能力を有する者かつ、自分で問題設定をしそれを解決する能力を有することであるとの考えを述べました。

  • 国立研究開発法人水産研究・教育機構 上原様
    現状は水産学・生態学系の研究者がAIに挑戦している状況であるとを説明しました。研究開発職員を採用時の試験採用の試験には、水産基礎知識に関する記述試験)があることで、水産や海洋学以外の人材確保が困難になっています。水産・海洋系の大学においてAI人材が育成されることを期待すると述べました。

(井関コーディネーター)
この分野では今段階では同じような状況ではと想像しますが、専門の研究者或いは技術者の方がデータサイエンスの方に歩み寄る必要があるということが理解できました。
DTUには、同じ教育機関として伺いたい内容を質問に回答する形式でお答えいただきます。

  • DTU Dr. Nielsen
    Q)さまざまな業界におけるAIプロフェッショナル(データサイエンティスト)に求められる基本的なスキルは何だと思いますか?
    A)学生と共に学ぶ中で、また産業界の方と共に仕事をする上で、やはり重要な鍵となるのは各々での領域についての専門知識だと考えます。学生に対しては背景となるしっかりとした専門領域の知識を身につけてもらうことが重要であるでしょう。専門領域の知識を元にしてその上にAIないしはデータサイエンスの知識を積み上げていくことが大事です。別の言い方をすれば、優れた船舶の技師であれば、優れたAIのプロフェッショナルにもなり得ます。つまり、学んだデータサイエンスのスキルを様々な分野に適応することが可能となるからです。逆にデータサイエンスを学んだものが、専門領域でその知識を適応できるかというと、その方がずっと難易度が高くなるのではと思います。というのは、その領域の専門知識を持たずしてゼロから知識を学んでいくということが非常に難しいからです。

    Q)このような基本的なスキルを教えるにあたり最も重要なことは何でしょうか?
    A)シンプルにお答えできると思います。データを分析するにしてもまた機械学習を駆使するにしても、それがどのような領域であったとしても入ってくるものがごみのようなものであれば出てくるものもやはりごみのようなものになってしまう(rubbish in - rubbish out)。ですから、それが工学であってもその専門家であったとしても、これから仕事を始めようというような人でも、まずは、その背景にある専門分野での知識というのをしっかり持った上でなければ次のステップとしてAIなり機械学習を学ぶことはできないということになります。その専門領域の知識なくしてはその結果が出てきたとしてもそれを評価することができない、AIを使って解析した結果を評価できないということになってしまします。

    Q)学生
    にデータサイエンスを教えるのに苦労することはありますか?その困難をどのようにして克服しますか?
    A)デンマークでは幸いなことに産業界と非常にいい協力関係がありますので、教えることが難しいということはありません。実際プロジェクトやクラス等でデータサイエンス等を導入し、取り上げていますが、しっかり学生さんたちに教えることができているのではと思います。繰り返しになりますが、それぞれの専門領域の知識こそ最も重要となるので、まず最初にやるべきは専門領域の知識をしっかり身につけ、その後にデータサイエンスを適用すればいいだけであるということです。

(井関コーディネーター)
所属する専門分野、専攻の知識をまずやはり学生にしっかり教育することが大事だと再認識しました。

  • 東京海洋大学副学長(プログラムコーディネーター) 庄司るり
    本学では、専門分野についての教育はそのままに、AIに関する基礎的なデータサイエンス教育を行います。大学教員で教育できない実践的な部分は、コンソーシアム連携機関を中心とした外部との連携により実現していきます。
    また、学生向けにこのようなAIプロフェッショナルのスキルを身につけたらどのようなキャリアが開けるのかについて明示していくことが求められると述べました。

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終了時刻が迫り、もっと対話が盛り上がりそうなところ惜しまれつつ、パネルディスカッションは幕を閉じました。

 

聴講者アンケート(38名)

  • 聴講者の専門分野questionnaire-1.png
  • シンポジウムの開催を知った方法questionnaire-2.png
  • シンポジウムの全体的な評価

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