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インターンシップ受講者の体験談:海外派遣インターンシップ(タイ)

インターンシップ先:所属:日-タイ合同プロジェクトチーム
実施場所:
日本(東京海洋大学、関連企業 ほか)
タイ(KU:カセサート大学、TNSC:タイ荷主協会、その他)
インターンシップ期間: 平成20年5月〜継続中
主な仕事内容:
「タイからの輸出海産食品の安全管理システム構築」プロジェクトへの参加
参加者データ:博士後期課程1年 男性

インターンシップへの概要

 私が参加したインターンシップは、企業の研究所や生産現場において、一定期間、研究活動や生産活動に携わる形ではなく、国や企業の枠を超えた、食の安全管理システムを構築するプロジェクト、すなわち、日本とタイの大学や企業から専門家が参加して、勉強会、討論会、見学や研修を通して食の安全管理システム構築を行っていくプロジェクトに参加するものです。具体的には、海外(タイ)からの海産物を、量的に安定、かつ、安全に輸入するための統一された規格、すなわち、タイからの輸出海産食品の安全管理システムを構築するためのプロジェクトに参加しています。グローバル市場で働ける人材を育成する目的で設けられた、初めての、海外での活動を含むインターンシップです。

インターンシップに参加して

 私がインターンとして参加し始めたのは、博士課程1年の5月頃からです。しかしその準備は、後述のように2月から始まりました。この海外派遣インターンシップに参加した学生は、私の他、修士課程の学生と修士課程の社会人学生2名です。私の研究は装置の洗浄・殺菌に関するものですので、プロジェクトの内容は、直接自分の研究に関わる内容ではありませんでしたが、大学での研究とは切り離して考え、この貴重な機会に参加することにしました。

 まず、インターンシップに参加するにあたっては、プロジェクトの内容をきちんと理解できるよう、勉強する必要がありました。そのため、参加するプロジェクトの活動が開始される以前の2月に、滋賀県と岡山県の食品加工工場を見学し、勉強を始めました。ちょうどこの時期は修士論文提出の時期でもあり、時間的にきつくもありましたが、現場を見学することはたいへん興味深く、インターンシップで参加するプロジェクトへの意欲が湧いてきました。

 6月には、プロジェクトに参加するタイの専門家が来日し、日-タイ間での安全基準の違いについての討論会が行われ、私も参加しました。これに続き、8月には、日本からタイへ研修と見学に行きました。

 8月下旬のタイ訪問は、プロジェクトに参加している学生のみで訪問団を組織し、数日間行われました。私が訪問団のリーダーとなり、大学院生3名とともに、カセサート大学でのタイ企業と対象としたタイ基準の食品管理に関する研修会に参加し、現地のエビ養殖場、輸出用エビの加工場を見学しました。この訪問に先立ち、私には、「GAPについての基礎知識を勉強した上で、英語で表現できるようにしておきなさい」、との事前準備が課せられました。カセサート大学でのタイ企業を対象とした研修で、私も発表する必要があったからです。私の英語力は、当初、プロジェクト関係者に不安を感じさせるものではありましたが、最終的にはプロジェクトリーダーとインターンシップ担当教官に合格点をいただけましたので、過剰に心配することなく訪問し、現地では何とか自分なりにこなすことができました。しかし、海外派遣インターンシップですから、本当はもっと英語力があった方がよいに決まっています。次回、タイへ行くまでにはもう少し英語力を身につけたいと思います。

 カセサート大学での研修後、エビの養殖場と加工場を見学しました。タイ国内におけるGMPの実態を調査するためです。日中は見学に回り、夜には訪問団の大学院生と見学した施設や作業場について意見を交わしました。大学院生とはいえ、そのうちの2名は企業の第一線で働いている方々ですので、私とは視点は全然違います。海外からの食品の買付けの最前線で日本の食の安全のために働き、企業で鍛えられている彼らは、全般にわたって見方がとてもシビアでしたし、どんな視点でどこを見ているのか、たいへん勉強になりました。また、「人のため」、というよりも「日本のため」、という気概で頑張っている姿に、自分も日本の食の安全のために、何かしなければいけない、という使命感が湧いてきました。それは研究室にいるだけでは感じられなかったことだと思いますし、自分でも成長を感じることができました。そしてもうひとつ成長を感じましたのは、6月の討論会の際には、タイの方からは学生として扱われているように感じた私ですが、この訪問では一人前のプロジェクトメンバーとしてみていただけたと、実感したことでした。

 帰国後も訪問の報告をしなければなりませんでしたので、博士論文の研究との両立はたいへんでした。しかしながら、その意義と責任感とがインターンシップに参加してからの経験で大きくなり、大学での研究とは異なる、もうひとつの大きな仕事と考え、たいへんでもその両立をさせていくために頑張ろうと思うようになりました。それまでの活動をまとめる過程で、自分自身が成長し、充実していたと実感することができました。さらに報告会では、ここまでのインターンシップの内容に、関係者の皆様からよい評価をいただくことができました。

プロジェクトでは、次に、タイの方々に来日していただき、中小の工場(加工場)を見学していただく予定です。それには私も参加し、日本の規格管理についての理解を深めていただけるよう、タイでの導入へのお手伝いができるよう、尽力したいと思います。プロジェクトの内容はとても重く、とてもインターンシップの学生が遂行できるようなものではありませんが、食の最前線にあって、「失敗はできない」という緊張感を持ち続け、手となり、足となり、どこかで役に立つことができれば・・・、という気持でこれからも参加していきたいと思っています。

次年度へ向けて

 インターンシップの機会があれば、次年度以降も、ぜひ、多くの学生に参加してほしいと思います。

  インターンシップへの参加は時間的に拘束されますので、研究に支障がないといえばウソになりますが、教官の理解が得られ、やってみようという気持があれば、ぜひ参加してもらいたいと思います。私は先ほど、「日本の食の安全のため」に、と申しましたが、それだけでなく、むしろ自分のために参加してほしいと思います。大学だけにいるよりもずっと視野が広がり、社会を見ることができるようになります。

 研究の最先端は大学だと思います。しかし、社会の最先端は企業です。研究は大学の中で進みますが、社会とのリンクは少ないと思います。研究成果を社会に還元する人間がいないと日本は世界の中でおいていかれると思います。博士課程の学生は研究室にこもりがちですが、インターンシップに参加することでずっと視野が開けます。社会を客観的に見ることができるようになれば、大学のよさも再認識するでしょうし、「こういうことに役立つからこういう研究をする」と明確な方向性を持って、研究費をどんなふうに使うか、どんなふうに研究費を得られるようになるかを学ぶことができます。

 また、インターンシップへの参加経験は、就職活動のためにまとまった時間が取れない博士課程の学生にとって、就職に際して圧倒的に有利に働くことは間違いありません。例えば、私の場合、タイの日系企業などでは優先的に採ってもらえるだろうと、プロジェクトメンバーには言っていただいています。

 もちろん就職活動以外にも、企業の方からいろいろ学ぶことができます。私の場合は、以前は企業で働くということは漠然したイメージでしかありませんでしたが、企業の方と一緒に行動しているうちに、イメージがはっきりしてきました。そして、自分の理想だけではなく、地に足をつけた「働く」という感覚が実感として分かるようになりました。これもインターンシップに参加して得られたことだと思いますし、ぜひ、次に参加する方にも実感していただきたいと思います。

おわりに

 私をプロジェクトに参加させて下さった先生方、また、タイのカセサート大学の先生方、TNSCのスタッフの方々、共にタイへ訪問した訪問団のメンバーの皆様に感謝の念を表します。