METIS 体験記
派遣先:UiS(スタバンゲル大学)
派遣時期:2025年8月~12月
大学院 食機能保全科学専攻 博士前期2年 N.A.
・なぜ留学に行こうと思ったか
ノルウェーは教育の先進国として有名であったことから、実際に現地で教育を受けてその実態を知りたいと思ったためです。また、海洋大においてノルウェーからの留学生と接した際、彼らの議論する力、英語力に感銘を受け、現地で専門分野を学びながら討論する力を伸ばしたいと思ったことも理由の一つです。
留学については、研究室に配属された学部4年の頃から指導教員の先生と相談を重ね、タイミングを伺っていました。私の選んだテーマ的に研究での留学は難しいこと、幸運にもMETISの単位取得型のプログラムが開始されたことから、本プログラムへの参加を決めました。
実際に留学に行ってみて、ノルウェー人だけでなくヨーロッパ各地の留学生と接しましたが、話す能力の高さ(英語力だけでなく内容も)に圧倒されながら、私も負けじとコミュニケーション能力を向上させることが出来たと思います。
・留学先での授業
私は環境工学とバイオテクノロジーの授業と、学位論文発表におけるプレゼンテーションスキルを伸ばす授業を受けました。
基本は1コマ2時間ですが、実際は45分ほど経ったら休憩をはさみ、また45分程度受けて終了することが多く、実質90分授業でした。また基本的に一科目につき週に2回授業があり、日本の授業より一科目の重みが重かったです。
環境工学は、排水処理の技術について工学と微生物学の観点から、バイオテクノロジーでは、ガン治療等の医療分野で用いられる分子生物学の技術について学びました。海洋大では食品に関する微生物学、工学、化学を学んできたため、新しい分野を英語で学ぶことに苦戦しました。授業内だけでは半分ほどしか理解が出来なかったので、授業後にレジュメを見返して分からないところは次回クラスメートに聞くことで、理解していきました。
テストは何と一科目3~4時間あり、内容は応用問題が多かったです。先生が過去問を配布してくれていたので、それを解いて対策を行いました。プレゼンテーションの授業は、レポート、ポスター、口頭試問の3つの試験がありました。口頭試問は自分の選んだテーマに関するポスターを作成し、それに基づき質疑応答をする形式でした。
いずれも準備は大変でしたが、図書館が24時間開いていたこともあり、テスト期間は友達と図書館にこもって勉強し乗り越えました。
単位を取る授業以外には、環境工学のフィールドワークに聴講生として参加したり、養殖技術に関する1週間のセミナー、イタリアでAIとソフトスキルを学ぶ一週間の交換留学に参加したりしました。フィールドワークは1日だけの参加でしたが、湖に行って水を採取し富栄養化の実態調査をしたり、河川の水の流れを測定したりしました。この学びはテスト対策にも活きたので参加して良かったです。養殖のセミナーは、社会人学生が多く参加しており、4人チームでノルウェーの養殖企業が抱えている課題の解決策を考え発表しました。社会人経験のあるチームメイトが生成AIを活用しながら効率的に問題点を分析し解決策を出していく姿に圧倒されつつも、共に発表に向け、準備していきました。準備の過程では、養殖会社の社員や大学の教授たちから現場の意見や学問的なアドバイスを受けて内容をブラッシュアップすることも出来、一つの問題を複数人の視点から見て課題への理解を深めました。イタリアでの交換留学は、スタバンゲル大学の交換留学プログラムを利用して、他のヨーロッパ各地の大学生と共に、AIを用いたビジネス課題の解決方法を学びました。クロアチアやリトアニアといったヨーロッパ出身の学生以外にインドやパキスタン出身の学生も多く、グループワークは難しさがありましたが、様々な学問分野の学生と交流するいい機会となりました。
授業だけでもかなり忙しかったですが、このように課外活動にも積極的に取り組むと学びの幅が広がり、おすすめです。
・留学先の寮や食事など生活面
私はSiSという学生組合の提供する学生寮に滞在しました。寮は数が限られており必ず確保できる保証がなかったので、早目に予約をして、コーディネーターの方にプッシュしてもらい何とか枠を勝ち取りました。寮費は月6万円程度だったので、東京の一人暮らしの家賃よりは安いのかなと思います。部屋は2人でバスルームとクローゼットを共有し、個室にベッドと机があり、プライベートも確保されつつルームメイトとも交流することが出来ます。キッチンは7人で共有しており、時間が合えば他の寮生とも関わることが出来ます。私はキッチンの滞在時間が長めだったので、そこで多くの友達を作ることが出来ました。また、ルームメイトは別のキッチンに割り振られていたので、ルームメイトのキッチンにもお邪魔して交友関係を広げました。キッチンメイトは国籍もバラバラだったので、自国の料理を振る舞いあったり、月に2回ほどの寮の外の友達も呼んでパーディーを開いたりして非常に楽しかったです。
ノルウェーは周知の通り物価が高いですが、奨学金を頂いていたこと、自炊をしていたことで、何とか暮らすことができました。ただ、果物とお米(タイ米)、パンは日本より安く、乳製品は日本と変わらない程度なので、恐れるほどではないかもしれません。更に、大学で毎週月曜日に無料でワッフルが提供されるWaffle Monday や教会で毎週木曜日に600円程度でおなかいっぱい食べられるディナーが開催されていたり、学内のプロモ―ションイベントで無料のピザを提供していたりと、探せば様々な食の支援があったため重宝しました。
雑貨や家具などは、中古品を安く手に入れていました。ノルウェーは、日本よりも中古品を使うことが一般的なのか、学校内にもセカンドハンドショップがあったり、週末に小学校でフリーマーケットが開催されたり、メルカリのようなオンラインマーケットも充実していたりと、中古品にアクセスしやすい環境でした。
スタバンゲル大学では、ボードゲームナイトやエクササイズ+ランチ、寒中水泳、ハイキング等、様々なイベントを無料または低料金で毎日のように開催しており、全部にはとても参加できないほどでした。スタバンゲルは地方都市で東京のように遊ぶ場所は少ないかもしれませんが、このようなアクティビティが沢山あり飽きることがありません。更に、学内にはスポーツセンターがあり月5000円程でヨガ、ピラティス、ダンス、バイクなどのレッスンや、ランニングマシンなどのジムを利用することが出来ました。ここで週に3回程汗を流してリフレッシュしたり、ダンスに初挑戦してみたりと楽しい時間を過ごしました。
・文化的に日本と違うなと思ったこと、自分の考えや行動が変わったなと思えること。
今回修士での留学だったこと、プログラムの趣旨も「海洋の未来を創造する高度専門技術者の養成」であることから、授業やセミナーを通して専門分野の勉強を頑張るぞと意気込んでいました。もちろんこれは大事な姿勢ですが、いざ留学先に行ってみると、ヨーロッパ出身の交換留学生の多くは勉強も大事だがSocialize 、つまり遊びこそが醍醐味だ、というスタンスで、私も「勉強ばかりするな」と言われ、驚きました。
無論彼らは授業にもしっかり取り組んでいますが、空き時間は旅行、ハイキング、スポーツ、クラブなど様々な形で他の学生と交流する機会を持っていました。
私は英語での授業に苦しんでいましたが、なるべく遊びの誘いを断らないようにしたところ、遊びを通じて英語での会話力、異文化への理解、コミュニケーション力が強化されただけでなく、友達が増えたことで一緒に勉強する仲間ができ、授業で分からないところを教えてもらえるなど最終的に勉強面にもつながりました。
勉強と遊びのバランスを取ることは、留学生活においてくじけずに効率的に学びを続けていくうえで大事であることを学びました。
・困難だったことと楽しかったこと
困難だったのは、言語の壁です。ヨーロッパ訛りの早口英語に加え、話す内容にも文化の違いがあって最初は難しかったです。特に大勢だと個々の理解度は当然考慮されないので、黙って話を聞くしかなく歯がゆかったです。また時々私が話しても日本語訛りで理解されないこともありました。
そのため、最初は1対1でのコミュニケーションで話す力を鍛えていき、徐々に複数人の会話で聞き返されてもいいので話すように努力しました。また、1~2ヶ月経つと周りの人が話している言葉が聞こえるようになってきたので、分からない単語を調べて使用するようにしました。私は幸いにもリアクションがよく、色んな文化の話を聞くのが好きなので、話を聞いてしっかりリアクションして質問を重ねていくと、相手も心を開いてくれて話し相手になってくれました。また、留学生は英語が母語ではない人がほとんどで、皆も程度の差こそあれど英語に不安を抱いている、ということに気づいてからは、尻込みせずに話せるようになっていったと思います。
楽しかったことは、ノルウェーならではのアクティビティです。特にCabin tripという山小屋での宿泊は心に残っています。水道がなく電気も限られた環境で、湖の水を汲んで簡単な食事を作って、暖炉に火をくべ温まり、天の川流れる満点の星空やオーロラを眺めて眠りにつく体験は、なかなか日本では出来ないことだと思います。ドイツから車で来た友達が、車で度々ハイキングやCabin tripに連れて行ってくれて、違う惑星に来たかのような美しい景色を見て共にゆっくり時間を過ごせたことは、かけがえのない思い出です。
・プログラム全体の感想
今回学部生の頃から念願だったノルウェーに留学することが出来、学問的にも人生的にも多くの学びを得ることが出来ました。4ケ月半という短い期間ではありましたが、初めてアジアを飛び出して顔も文化も全く違う人々と暮らし、対等にコミュニケーションを取れたことで、日本の外にも自分を理解しようとしてくれる人がたくさんいることに驚き、自分に自信が持てました。またスタバンゲル大学では全学生に開かれた1週間程度の短期の学習プログラムが多く、自分の専門分野以外も幅広く学ぶことが出来良かったです。
本プログラムで経済的な支援を含め渡航のために手厚くサポートしていただいたMETIS事務局の方々、および本プログラムの運営に携わる先生方に深く感謝申し上げます。将来再びヨーロッパ地域に戻って仕事や勉強をしたいという目標ができたので、それに向かって今後も努力していきます。

シェアキッチンの様子

教会でのディナー

プライドパレードの様子

友人とのハイキング

授業の様子

学生実験

湖でのフィールドワーク

イタリアの大学での交換留学










