2025年度METIS CTEXプログラム報告書
派遣先:UiT(ノルウェー北極大学)
派遣期間:2025年8月~12月
大学院海洋科学技術研究科
海洋資源環境学専攻 博士前期課程2年 I.H.
2025年8月~12月の1セスター間、METIS CTEXプログラムを通じてノルウェー、トロムソにあるノルウェ-北極大学(UiT)に留学し、地球科学について学びました。その経験について、現地での学業、生活の様子、得たことという観点でまとめて報告いたします。
トロムソとノルウェー北極大学(UiT)
トロムソはトロムス島を中心とした都市で、ノルウェー北部の北極圏内に位置します。島をバスで縦断しても一時間程度で、その中に空港やショッピングモール、大学、観光客が多く訪れる中心街が集まるコンパクトな街です。暖流である北大西洋海流の影響で、北緯約70度という高緯度にしては寒さが厳しくないとされています。夏は10~15℃で、10月から雪が降り始め、冬は最低で-17℃を経験しました。夏には白夜、冬には極夜が訪れます。
このトロムス島中部にノルウェー北極大学(UiT)はあります。トロムソ大学とも呼ばれるUiTは国立の総合大学で、地球科学以外にも社会学や工学、医学、水産学など様々な学部・学科をもちます。そのためキャンパスは広く、建物が多く建ち並んでいて図書館やカンティーナ(食堂)、売店の他、スポーツセンターもありました。どれも新しい印象です。学生はノルウェー人のほか、欧州各国からの留学生もよく見られ、特にドイツ人留学生は多い印象でした。
アジア人は多くなかったものの、私が滞在していたときは日本人留学生が大学全体で9人いました。

トロムス島全景(対岸のStorsteinen山より)

極夜に包まれるUiTのキャンパス
UiTでの学業
私はUiTでの所属学科として、地球科学を学べるDepartment of Geoscienceを選びました。授業はField Trip Hard Rock Geology、 Environmental Geology、Marine Geohazards、Integrated Subsurface Geological Analysis、Micropalaeontology の5科目を履修し、30ECTSを取得しました。いずれも英語で開講されます。このうちField Trip RockkGeology、Environmental Geology、Marine Geohazardsに関しては正規学生の必修科目だということもあり、履修を決めました。
授業の開講形式としては、毎週決まった時間に行われる定期的な授業と、一定期間、毎日行われる集中講義の両方があります。私の場合、1回3時間程度の定期的な授業が週4回あり、それに加え、朝9時から夕方16時まで行われる講義が1週間程度続く集中講義が2度ありました、履修した授業は、全てDepartment of Geoscienceの建物で行われました。担当教員も同じ建物にオフィスを構えているため、質問しやすい環境です。授業によってはオンラインで開講されることもあります。
講義だけではなく、実験や実習、フィールドワークもあります。例えば、微小な化石を顕微鏡で観察したり、UiTの研究船による日帰りの実習に参加したりしました。また、ノルウェー中部の鉱山跡へ巡検に行ったり、ノルウェーのエネルギー企業が持つ施設で堆積物試料に触れたりしました。どれも東京海洋大学では学び得ない内容であり、刺激的でした。
課題や最終試験に関しては、それなりのボリュームと難しさがあるように感じました。少なくとも週に2回は何らかの課題があり、集中講義となると毎日のように課題提出が求められました。最終試験の形式としては、期日までにレポートを提出するHome exam、大学内の指定された教室でパソコンを使って一斉に受けるSchool exam、試験官の質問に対して口頭で解答するOral examの3種類がありました。当然ながら、いずれも英語(授業によってはノルウェー語も可)で解答しなくてはいけません。

実習で乗船したR/V Helmer Hanssen

鉱山跡で行われたフィールドワークの様子
日々の生活
ノルウェーで使われている通貨はノルウェークローネ(NOK、2025年の滞在時は1NOK=約15円)で、物価は日本のおよそ2倍です。支払いはキャッシュレスが主で、現金を使う機会はほとんどありません。
交通網としては、バスが発達しています。
住宅は、Samskipnadenと呼ばれるノルウェーの学生生活支援機関の寮を利用しました。大学からバスで20分ほどのトロムス島北部に位置し、個室、トイレ・シャワー・キッチンを6人で共用し、最低限の家具・キッチン用品がついて、寮費4950NOKでした。寮にはノルウェー人やヨーロッパ、アフリカからの留学生がいました。洗濯については、寮から歩いて2、3分の別棟にランドリールームがあり、それを利用していました。
寮から歩いて20分の場所にスーパー、バスで40分ほどの場所にショッピングモールがあり、食料品や生活用品、プリペイド式SIMカードといった買い物はそこでしていました。食事は自炊か、大学のカンティーナを利用しました。食費、寮費、など合わせて、生活費は15万円あればまかなえると思います。
休日は、大学のクラスメートと近くの山へハイキングしたり、お世話になっていた先生に招かれてホームパーティーに参加したり、日本文化を現地の学生に体験してもらうイベントを開いたりしていました。その他にも釣りができたり、サッカースタジアムがあったり、水族館やスキー場があったりなど、様々な楽しみ方があります。

Tromsdalstinden山からフィヨルドを望む

フィールドワーク中の食事。メンバーでタコスを囲む
留学の感想、得たこと
トロムソでは、ゆったりとした空気が流れていました。また、街の人もフレンドリーな印象で、街中で話しかけられることもしばしばありました。たいてい最初はノルウェー語で話しかけられ、見た目だけで外国人と判断されていないことが心地よく感じました。
大学については、実習、フィールドワークに参加しても、実習費自体の徴収がなく、北欧の高福祉社会を感じました。成績評価にしても公平性が極めて重視されています。課題や最終試験は必ず他大学など外部の人によって評価され、異議がある場合はそれを表明するシステムも準備されており、日本との違いに驚きました。
留学中、苦労したこともあります、例えば、フィールドワーク中、グループで専門的な議論をする際、自分の考えを伝えるのに苦労し、もどかしく情けない思いをしたこともあります。しかし、私が所属していたDepartment of Geoscienceではアジア人学生が私一人だからこそ、逃れようがなく向き合えたのは幸運なことでした。授業も、海洋大での勉強とは大きく異なり、日本語でも学んだことがないことを英語で学ぶのは大変難しいと感じました。そのようななかで試験期間中、大学に集まって友人と対策し、最終的にきちんと成績を収めることができたのは一つの成果です。
そして、ノルウェーでの留学生活を経て、日本文化とノルウェー文化の共通点・相違点を見つけ、日本の相対化が出来たと感じています。今まで長期にわたって海外で生活を送ることがなく、私にとって日本文化が絶対的な基準だったため、このことは大きな収穫でした。また、様々なバックグラウンドやキャリアを持つ人との出会いは、刺激的であり、自分の将来を考える上で様々な示唆を与えてくれました。この留学は、派遣先大学で地球科学について学び、単位を取った以上に得られたことが多く、新しいものの見方や当たり前を見つけ、新しい自分を知る良い機会となりました。

10月某日、目が覚めてカーテンを開けると雪が積もっていた。

寮とオーロラ










