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REPORT

留学生リポート

2026.05.14
TUMSAT D1 2026年(1月~3月)

METIS 帰国後活動報告

派遣先:NTNU(ノルウェー科学技術大学)

派遣時期:2026年1月~3月

大学院 応用環境システム学専攻 博士後期1年 S.I.

<プログラム概要・参加経緯>

 本インターンシップには、海洋AI卓越大学院からの紹介を通じて参加させていただきました。昨年5月に海外インターンシップの募集があり、卓越大学院プログラム教員の方からも勧めていただいたことをきっかけに、海外での実務的な研究活動を経験したいと考え、応募しました。

その後6月に受け入れ先(NTNU)の指導教員の方とオンライン面談を行い、正式に派遣が決定しました。派遣決定後は、出発までの航空券・住居手配等の事務手続きをMETISプログラムサポーターの方々にご協力をいただきながら進め、3か月のインターンシップを無事に終えることができました。

 短い期間ではありましたが、異なる文化・言語背景を有する海外での研究生活は実に密度の高い時間であったように思います。本レポートでは、現地での私生活・研究活動について記載します。今後METISに挑戦される方の参考になれば幸いです。

<私生活>

 住居については、2025年10月ごろから本格的に物件を探し始め、運よく学生用住居を提供するSit Bolig のワンルームアパ-トメントを契約することができました。大学のキャンパスより徒歩10分ほどの距離だったため、交通費や通学時間の面で大変助かりました。物件の契約管理はSit Bolig公式のマイページから行い、家賃支払い、契約解除、クリーニングチェック依頼までマイページ内で完結でき、非常に扱いやすかったです。

派遣期間がちょうど冬の終わりから春先にかけてだったため、3か月の間に日照時間や街並みに変化が見られ、年度末であることを除けばおすすめできる時期です。到着直後は積雪により路面が滑りやすく、気温も最低−12℃程度まで低下したため、防寒着が必須でした。一方で、3月に入ると寒さも和らぎ、多少薄手の服装でも過ごしやすくなりました。日照時間は1月には9時~15時程度しかなく、高緯度独特の空模様が見られますが、滞在終盤はほぼ日本の日照時間と同程度になっていたように感じます。

 ノルウェーはEU非加盟国なので、通貨は1NOK(ノルウェークローネ)が使用されます。滞在期間中のレートは、日本円で1NOK あたり15~16円程度でした。決済方法は電子決済が主軸で、滞在期間中に現金を使用する場面は一切ありませんでした。そのため、現金両替をしなくても、クレジットカードを2枚ほど用意しておけば決済面で困ることはないと思います。

 食料品や生活必需品などの値段は日本の2~2.5倍程度に感じました。外食の場合はさらに高額で日本の3倍に上るところもありました。そのため、日々の食事は自炊中心となります。通常のスーパーでは、ジャポニカ米や味噌・醤油・薄切り肉などの日本で一般的な食品こそ見かけませんが、それ以外の食材については似通っている部分も多く、日常的な食材の調達で苦労する部分はありませんでした。

 交通手段は鉄道がなく、オーレスンでは基本的に街を横断する道路に上りと下りのバスが走っています。バスのチケットは専用のアプリで区間指定・購入まで一括で行えます。90分有効な1回券や1日・1週間などの期間券を購入できますが、期間券は電話番号登録が必要なため、日本の番号の国際ロ―ミングか現地キャリアとの契約が必要になります。私はMyCallで現地番号を作成しました。滞在期間中にオスロ・トロムソといった他都市への旅行にもいきましたが、公共交通機関のアプリは年によって異なります。例えば、オーレスンではFRAM、オスロではRuter、トロムソではSvipperというアプリが使われます。ただし、アプリのフォーマットやチケット使用方法はどの都市でもほぼ同じ手順ですので、 一度どれかのアプリの使い方を覚えれば問題なく対応できます。

<大学生活>

 教授、PhD、学生など立場が異なっていても、表面的な上下関係がなく、ファーストネームで呼び合うなど、非常にカジュアルな関係を構築している点が新鮮でした。私自身も滞在当初はProf. ○○などの敬称を付けて名前を呼んでいたのですが、最終的にはファーストネームのみで呼ぶようになりました。

 キャンパスの建物は16時以降になるとロックがかかるため、時間外や休日の出入りにはアクセス用のIDカードが必要になります。教授の紹介もあり、ID登録の事務手続きについては滞りなく進めることができました。私はEKSTERN(外部協力者)の身分で大学に滞在しました。

 勤務時間は、おおよそ8時~16時までが基本で、残って研究することも可能ですが、早く始めて早く終わらせる生活リズムは、継続的な研究プロジェクトを進めるうえで大いに役立ったように思います。

 また、滞在中に所属部門の教員の方より、PhDの自治組織を紹介していただきました。NTNUのPhD課程に所属する学生との交流は、日本でのPhDとの視座の違いを客観視するうえで非常に有益でした。ほぼ毎日、彼らとランチタイムに大学のカフェテリアに集まり、食後のコーヒータイムに参加することが日課でした。非常に親切な方々で、彼らとの交流が本インターンシッププログラムをより充実したものにしてくれたといえます。イギリス、オランダ、ポーランド、ギリシャなど、かなり多国籍なグループであり、第二言語として英語を使用する学生も多かったため、アクセントや言い回しも聞きなれないものが多くありました。そのため、教科書通りの型にはまった英語ではなく、共通語としての英語に触れる良い機会にもなりました。

 また、滞在期間中はちょうど年に一度のCabin Tripの時期で、スキー旅行を通して親睦を深めました。スキー用の機材を借りることができたため、現地でアルペンスキーを体験できたことも望外でした。他にも、友人の論文がアクセプトされたお祝いにSentrumのビアホールに行ったり、定期的な研究報告会に参加させて頂いたりするなど、彼らとの交流が起点となり、自身の研究活動にとどまらない現場の側面を経験できたと思います。

 北欧の高福祉は日本でも有名な話ですが、NTNUも例外ではなく、週一回事務での運動を勤務時間に含められるなどの福利厚生制度が見られました。セミナーや会議等では、カフェテリアからカートでランチやコーヒーブレイクを注文できる仕組みがあります。この仕組みは、例えば予定が昼休みを横断するような場合や、プレゼン後のディスカッションにおける小休止として使われており、連続した議論を途切れさせずに休憩をはさむ導線として非常に実用的でした。

 このように、制度と自由が両立した環境を背景に、上下関係の緩やかさによるチーム関係構築の容易さと、個人のプライベートや業務への尊重が絶妙なバランスを保っていました。そのため、柔軟な意見交換や計画遂行が進めることができたのだと思います。

<研究活動>

 私の現在の研究は、水産業にデータサイエンス系のアプローチを適用する学際的な分野であり、NTNUで携わった研究もそれに近いものでした。そのため、現場でのフィールドワークや生物化学方面での実験よりも、収集したデータをサーバー等で処理するデスクワークの割合が高かったように思います。具体的な内容については記述を差し控えますが、この3か月で学んだ方法論やデータ処理のツールなどは、帰国後の研究にも大いに貢献するものであり、今後長期にわたって財産となるものでした。また、一口に水産業と言っても、その内容は日本とノルウェーで大きく異なり、それゆえに抱えている課題も異なります。本研究プロジェクトにおいても、そのような現場の背景の違いが研究計画の構築にまで大きく影響していました。日本で行なっている研究との類似性があったからこそ、その対照性を当事者の立場から明確に観察できたことは、今後の研究設計に大いに参考になったと思います。

 研究テーマや開始までの流れは、事前に受入先の教授とのメールを通じて綿密に調整していたため、初勤務日のディスカッションを通して、円滑に計画を確定できたと思います。その後は、おおよそ週に1回程度ミーティングを行い、進捗報告と改善点について議論しながら、細かな軌道修正を行いました。個人で進められる部分と議論が必要な部分を分け、ミーティングでは後者の確認・確定作業を行いました。アプローチ自体は日本での研究遂行とおおよそ同じですが、前述のように、指導教員と学生という立場以上に共同研究者としての扱いが強く、互いの専門分野を共有しながらより密な連携が取れていたと思います。

 前述のようにデスクワークが主要な作業でしたが、ノルウェーの環境に最適化された産業特有の設備や、産学連携制度については、実際の見学を通して理解を深めました。詳細については記述を控えますが、大学由来の技術であっても、実環境に近い環境で試行できる制度が整っており、全国規模で導入が容易な基盤がある点が非常に新鮮に感じました。日本とは発展の背景が異なるため、直接移植することはおそらく難しいと思いますが、実際に制度として機能している好例に触れたことは、研究の社会実装アプローチにおいて有力な引き出しの一つになるものと考えています。

 ここまで具体的な研究内容を記述できないのが残念ですが、百聞は一見に如かずというべきか、異なる環境・視座での研究経験がプラスに働くことは間違いないでしょう。プログラムのサポートも手厚いので、機会があれば応募をお勧めします。

研究室に備え付けののコーヒーメーカーIMG_7932-148.JPG

研究室に備え付けのコーヒーメーカ―

五十嵐さんのuku 研究室デスクIMG_7932-352.JPG

研究室で使っていたデスク

NTNUいけすの写真IMG_7932-846.JPG

NTNU管理のサーモン養殖生簀

オーレスン市内の様子IMG_7932-220.JPG

オーレスン市内

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夕方のAnkeret(校舎) 正面 - Phdの集まりで毎日利用していた

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世界遺産にも登録されているオーレスンのガイランゲルフィヨルド