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REPORT

留学生リポート

2025.04.01
METIS Internship Programによる派遣 体験記
派遣先:NTNU(ノルウェー科学技術大学)
派遣時期:2025年2月~3月
大学院 食機能保全科学専攻 博士前期 2年 K.K.
《生活面》

私はMoholt student village内の寮に滞在した。Moholt student villageは寮の建物が立ち並ぶ団地のようなエリアで、エリア内にはスーパーマーケットや飲食店、図書館、保育園、ジムなどがある。私が滞在した建物は6階建てであり、1フロアを最大4人で共有する仕様となっていた。フロアには共有のリビングルーム、キッチン(冷蔵庫、オーブン、食洗機あり)とバスルーム(トイレ、シャワー)、個室が4部屋あった。個室には机、ベッド、クローゼットが備え付けられていた。マットレス以外の寝具は用意されていないことがあらかじめわかっていたため、寝袋とブランケットを圧縮袋に入れて持参した。室内の暖房やシャワーの温度調節は問題なくでき、快適に過ごすことができた。寮の建物に入る段階で鍵が必要だが、立ち入りの制限が厳しくなく、ルームメイトの友人が共有スペースにいることも頻繁にあった。個室は施錠できるため、万が一の場合に備えて、寮を離れる時は必ず施錠をしていた。

滞在する部屋は、学年、国籍、性別に関係なく振り分けられる。私の場合は入寮した時点ですでにノルウェー人、フランス人、ドイツ人の男子学生が入居しており、彼らと共有スペースをシェアしながら生活していた。共同生活を円滑に行うためにも、共有スペースで顔を合わせた際は短時間でもコミュニケーションをとるように心掛けた。ルームメイトにもよるが、私のフロアの場合は、食事はみんなで一緒に食べるのではなく、各自が好きな時間に自身の食事を調理していた。しかし、別れ際に日本食を食べてみたかったと言われ、作ってあげればよかったと少し後悔した。荷物に余裕があれば日本食材を少し持って行くと良い交流の機会になるかもしれない。

寮の備品リストには記載がなかったが、以前入居していた学生が置いていったという電子レンジやケトル、食器類があり、共用備品として使用することができた。なお、日用品は入居者で用意する必要がある。ノルウェーでは飲料の空き缶やペットボトルをリサイクルすると容器代が返金されるPANTというシステムがある。ルームメイト達はトイレットペーパーや洗剤などの全員が使用する日用品はPANTで得たお金で購入しているとのことだった。私は短期滞在だったこともあり、彼らのご厚意でこれらの日用品をありがたく使わせてもらっていた。(その分、掃除などは積極的に行うようにしていた。)このように、私は日用品を現地でほとんど調達することなく過ごすことができた。しかし、万が一何もなかった場合に備えて、数日間は乗り越えられるように食料や日用品を用意しておくべきだと思う。私の場合は、1~2日間はしのげる分の食料(ラーメン、粉末スープ、シリアルバーなど)、キャンプ用のケトルクッカー、カラトリー、トイレットペーパーを持参した。また、ノルウェーはスーパーも含めて、日曜日に営業していないお店が多い。私は土曜日の午後にノルウェーに到着したのだが、次の日に買い物に行こうとしたら営業している店舗が限られていたので注意する必要があると感じた。

洗濯については、寮の敷地内にあるランドリーを利用していた。appWashというアプリに入金した上で、アプリで支払いと利用操作をする。一回あたり23クローネで利用できる。洗剤は自動で出てくる仕組みになっているため、個人で用意する必要はなかった。なお、アプリ内の残高は手続きをすると、入金手続きを行ったクレジットカードに全額返金された。

北欧は物価が高いことで有名だが、中でもノルウェーは特に高いと言われている。外食をすると一食あたり2~3000円かかるため、基本的に自炊をしていた。1か月のみの滞在で、調味料類を買い揃えるのも面倒だったため、簡単な料理で済ませることが多かった(サンドイッチ、パスタ、シリアル、カレーなど)。パンに塗るペーストや、ご飯にも合う味付けのサバ缶、インドカレーの素などが豊富にあり、よく利用していた。また、ゆでるだけでご飯が完成するboil in bagのお米が便利だと感じた。凝った料理が食べたい時はストレスを溜めないためにも我慢せず、思い切って外食をしていた。特に大学のカフェテリアのメニューや、スーパーにあるサラダバーは比較的安価(基本的に1000円以内)で済ませられるため、罪悪感も少なく利用できた。また、冷凍・チルド食品のラインナップも比較的豊富で、ピザやパスタの他に、チャーハンなどアジア系の味付けのものもあった。

ノルウェーでは水道水を飲むことができる。ペットボトルの水は割高なため、水筒を使うとかなり節約になるだろう。私の場合、外食も含めた1か月の食費は約6万円であった。


《研究面》

私はNTNUのAkrinnキャンパスで実験を行った。通学にはバスを利用しており、1か月分のバス定期券を購入した。

実験を始めるうえで、オンライン教材や実験室の使用方法に関するレクチャーの受講、実施する実験のリスクアセスメント評価資料の作成などを行う必要があった。また、これらの手続きと同時に学生証の発行を依頼し、Gløshaugenキャンパスの窓口に取りに行く必要がある。必要な手続きがすべて完了すると学生証がアクセスキーとなり、実験室や休日に大学の建物に立ち入ることができるようになる。オンライン教材の情報は事前にメールで送付されていたが、受講せずに渡航したため、現地で受講することとなった。また、リスクアセスメント評価資料は共同研究者のNTNUの博士後期課程の学生に作成を手伝ってもらったが、自力ですべて完成させるのは難しいと感じた。全体的に、海洋大よりも手続きが煩雑であると感じ、実験に着手できるまでに1週間は見越しておくべきだと思う。現地でないとできないこともあったが、書類の作成やオンライン教材の受講など、渡航前に取り組めるものは済ませておくと、比較的スムーズに実験が開始できるかもしれない。

今回の派遣では、既に約1年間取り組んでいた共同研究内容に取り組み、共同研究者のNTNUの学生と一緒に実験を進めた。渡航前から受入先教員や学生との打ち合わせを行っており、既に実験計画が明確であったうえ、実験手法を習得していたため、実験を行ううえで困ることはほとんどなかった。そのため、派遣前にどの程度まで受入教員や共同研究者と滞在中の実験計画を練ることができるかによって、滞在期間を有意義なものにできるかが決まると感じた。実験室の使い方は、基本的な部分は同じであったが、細かい部分などには違いが見られた。私は病原菌を用いた研究を行っていたため、病原菌の取り扱いが許可されたスペースで実験を行う必要があった。病原菌の取り扱いには特に細かくルールが定められており、慣れるまでに数日かかった。

実験室近くの廊下にはロッカーがあり、実験中に限って荷物を入れることができるようになっている。ただし、鍵は付いておらず、自分自身で用意する必要があった。最初の数日間は、貴重品はポシェットに入れて身につけた状態で実験をしていたが、煩わしかったのですぐに現地で南京錠を600円ほどで購入した

実験室付近のスペースや図書館、カフェテリアにテーブルが設置されており、自由に使用することができた。利用できる場所は人によって違うと思うため、渡航後に職員の方や学生に確認すると良いだろう。なお、教員や博士後期課程の学生は実験室と異なるフロアにあるオフィスにおり、修士課程以下の学生の学生証では立ち入ることができなかった。そのため、教員や博士後期課程の学生と会う必要がある場合は事前に連絡をしていた。


《METISインターンシッププログラムに参加した感想》

今回は私にとって初めて、所属研究室以外の場所で研究活動を行う機会であった。前述の通り、現地で取り組んだのはこれまで海洋大でも取り組んできた実験であったが、異なる環境で実験を行うことで、同じ実験操作やデータ処理を異なる視点から見ることができたと感じている。多角的な視点を取り入れた研究推進力を獲得するためにも、今後も積極的にMETISプログラムのような派遣プログラムを活用していきたいと思う。また、受入先研究室の学生やルームメイト、その友人たちと出会い、世界各地に様々な研究分野に取り組む仲間ができたことは、今後の研究活動の励みとなった。

NTNUにはノルウェー人以外にも、様々な国からの留学生が多く在籍しており、様々な地域を知ることができる良い機会となった。彼らと交流する中で痛感したことの一つとして、同世代の日本人よりも社会問題への関心が高いことが挙げられる。何気ない雑談の中でも、昨今の国際情勢を理解していないと話についていけないだろうと感じる場面が何度もあった。例えば、ノルウェーを含めたヨーロッパ諸国では移民や難民の受入が課題となっているが、そのことが話題になることが特に多く、日本の現状や日本人としての意見を求められることもあった。そのため、語学力のみならず、一般常識レベルの国際情勢を理解し、それに対してどのような意見を持つのか、日常的に考えることも重要だと感じた。

余談になるが、トロンハイムは北緯63度に位置しており、条件が揃えばオーロラが見られる。私が滞在していた期間は曇りの日が多く、見ることができないまま帰国前日の夜を迎えた。すると、突然ルームメイトたちが「今日ならオーロラが見れるかもしれない!」と言い、真夜中にわざわざ見晴らしの良い場所まで連れて行ってくれた。そのおかげで、帰国前日にようやく念願のオーロラを見ることができた。今回の滞在中で私にとって一番の試練は、女子学生が他にいない中でルームシェアをしたことであった。しかし、1か月という短い期間ではあったが、ルームメイトたちとの仲を深めることができ、彼らのおかげで研究以外の場面も充実した滞在期間となった。時には文化の違いに戸惑うこともあるが、積極的にコミュニケーションをとることで周囲との関係を築くことが、限られた滞在期間を充実したものにするための鍵であると強く実感した。



NTNU Akrinnキャンパス
NTNU Akrinnキャンパス

実験中の様子
実験中の様子

共同研究者であるNTNUの学生たちとの写真
共同研究者である
NTNUの学生たちとの写真

1か月間お世話になったルームメイトたち
1か月間お世話になった
ルームメイトたち

帰国前日に遂に見ることができた念願のオーロラ
帰国前日に遂に見ることができた
念願のオーロラ